過酷な介護の実態
高齢になった親の介護は、365日24時間、休みなくつづきます。このため、介護する家族自身が介護疲れを発生し、これが「介護うつ」「介護放棄」「介護離職」はては「介護殺人」なんて事態も引き起こしかねません。
こうした背景は、介護は突然余儀なく開始せざるを得ないケースが多いことにあります。家族は覚悟や準備もないままに、いきなり、これまでの生活からの変化を強いられてしまいます。
このため、親が要介護状態になったショックから、何から手をつければよいのかわからずパニックに陥ったり、仕事に支障が発生したりするなど、最初から精神的負担だけでなく、金銭的にも身体的にも大きな負担がかかります。
中には、勤めていた会社を辞めざるを得ない場合もあるでしょうし、身体的・精神的な負担が重なって介護疲れを感じるようになります。
本来であれば、家族や親戚の協力だけでなく、近所や地域の助けがほしいところです。
しかし、近所や地域との交流が薄れるだけでなく、親族との関係も疎遠になっている現代社会では、こうした支援を期待することはできず、どうしても、周囲から孤立しやすくなってしまいます。
また、介護をはじめると、それまであまり目立たなかった家族同士のいさかい表面化して、泥沼に陥ってしまうケースだってあります。
これが長く続くと、次第に介護する側の孤立が深くなり、閉塞感が強くなっていくと、介護者の体や心のバランスが崩れ始め、精神的に追い詰められていきます。
それが「介護うつ」や「介護放棄」といった危機を迎え、最悪な場合は、「介護殺人」という痛ましい事件に発展することもあります。
こうした、「介護崩壊」ともいえる出来事は、逃げ場のない介護生活をしている介護家族の誰にでも起こり得ることなのです。